最近よく聞くMVNOが出現してきた背景について考える

公開日: : 最終更新日:2014/12/11 MVNO

2014年に入り、ニュースなどでもMVNOという言葉が多く聞かれるようになりました。
有名どころでは最近スーパーのイオンが端末のセット販売も開始する等、MVNOサービスを拡大していますね、

ここでは、MVNOにおける簡単な概要、その中でも何故最近になってMVNOサービスが多く出現してきたのか、について触れてみたいと思います。

MVNOの定義

総務省が公表している
「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」
によると、MVNOの事業形態が多様化してきていることもあり、厳密な定義は困難であると、記載されています。キッパリ

ということで、総務省では便宜的な定義として以下のように定められています。

MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者。

つまり、ドコモやauやソフトバンクが持っている通信インフラ(電波、基地局)を間借りしている人たち。

ということです。

間借りしなくても自社でインフラを持ってサービスを提供したら良いじゃないか、という疑問を持つ方もいらっしゃるかも知れません。
投資コストや失敗リスク等を無視すれば、その手も考えられます。

通常であれば。。

ところが携帯通信事業の場合、そうはいかないのです。

電波そのもの自体が公共財のため、国が簡単には事業者に免許を与えないという面もあるのですが、その希少性ゆえ、新たな事業者が取得できるほどの帯域自体が既にほぼなくなっているというのが現実なのです。

一方、少数の通信事業者が限られた電波を使いつづけるという状態は、「寡占」という極めて不透明かつ自由な競争が阻害されることにもつながります。

そのようなこともあり、総務省では2000年あたりからMNOに電波の解放を促すべく様々な活動を行い続けてきた結果、ようやく最近になってMVNOサービスが顕在化してきたのです。

MVNOサービスが顕在化してきた理由

実は、そもそもMNOがMVNOに対して消極的であったこと(今でも?)も大きな理由の一つなのですが、ここではマクロ環境の一つである「技術的要因」の切り口から考えてみたいと思います。

端末のオープン化

今でこそ「SIM」や「SIMフリー」という言葉はよく聞かれるようになりましたが、そもそも昔は、携帯端末と通信モジュール(いわわゆるSIM)は一体型でした。つまり、ここ最近のように端末にSIMを差し込めば使える、といったことは出来ませんでした。

また、端末に乗っかっているOSも各メーカーごとに異なっているのと同時に、メーカーはMNOの仕様に合わせて端末を製造するという、いわゆるMNOの垂直統合モデルに完全に組み込まれていました。
これが日本メーカーが世界に進出できなかった、いわゆる「ガラケー」の背景でもあります。

このような状況下で事業規模の小さなMVNOが端末メーカーに端末を発注し、オリジナル端末を製造するのは非常に困難でした。
メーカーごとに異なる仕様で端末を製造するということは、メーカーも大きなロット発注を要求します。元々MVNOはMNOのようなマスではなく、特定のターゲットに対してサービスを提供する「小さな携帯事業者」です。先ずコスト的な問題が大きく立ちはだかりますし、MNOの通信モジュールを一体化させて積むわけですから、MNOからの大きな制約もあります。

すこし端折りますが、、そんなこともあり、2000年代後半まではMVNOが端末を製造することも、今のようにSIMだけ提供するような業態もできなかったのです。

ところが最近では特にAndroidの台頭により、端末がオープン化されています。

無料のOS Android + 機械としての端末

もうほぼパソコンの世界です。
端末自体はOSを動かす為のCPUやメモリ等、世界共通のモジュールで製造できるわけですから、コストは下がります。
それにAndroidのOSを入れれば完成!(細かくいうとgoogle側での認証等はあるのですが。。)

圧倒的に端末は安く、しかも小ロットでも製造できるようになったのです。
これでMVNOの大きな参入障壁であった「端末」のハードルは一気に下がったのです。

さらにいうならば、SIMフリー端末の出現によって、MVNOはSIMだけ提供し、端末は顧客が好きなものを使う、という形態が新たに追加されたことにより、障壁自体が消滅したともいえます。

2013年あたりから始まったこの大きな環境変化が、多くのMVNO事業者の参入意欲をかきたてた要因の一つであると思います。

高速データインフラ

高速データインフラの整備は、従来の音声通話からLINEやSkypeといったデータ通話サービスの台頭に大きく寄与しました。
元々、音声通話は年々減少しメールに代替され続けてきたわけですが、データ通話サービスの出現により、MVNOサイドとしては、「データ通信サービスだけでも充分行ける」と意思決定出来たのではないかと思います。

これが意思決定できるとMVNOの内部的に何が大きく変わってくるかというと、「ビリングコスト」です。
データ通信のみのビリングは、基本一定額を毎月請求するだけですが、音声通話が入ってくると、途端にプランの設計やプランに応じた課金設定が必要になり、MVNOとしては大きなシステムコストの負担になります。
LINEで通話される分には、データ通信なので複雑な課金設定は必要ないんですね。

このように、高速データインフラが整い、それに合わせたサービスを提供するプレイヤーが出てきたことにより、音声通話対応という障壁が大きく下がったんですね。

ちなみに、データ型通話に加えて、従来の音声通話サービスを提供するMVNOも2014年の夏あたりからちらほらと出てきましたので、顧客としてはさらにMVNOを選択しやすい環境になりつつありますね。

まとめ

技術的側面からみると、上述のとおり、ここ最近のMVNOの台頭は「端末のオープン化」と「高速データインフラ化」に整理できると思います。また、2015年度からはSIMロック解除の義務化がMNOに課されますので、MVNOにとっては追い風になるでしょう。
また、大手の家電量販店ではSIMフリースマホが続々と出現し始めています。

携帯電話の契約は、MNOのショップで。が今までの常識でしたが、これからは様々な選択肢が出てくると思われます。

なお、MVNOの出現理由は、その「ビジネスモデルや特性」の側面からも整理できますが、これは別に記載していきたいと思います。

 

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